悪魔の朝は遅い 日もだいぶ高くあがった頃、マンション最上階の広いベッドで睡眠を貪っていた家主は、ようやくその中でもぞもぞと動き出した。白いシーツの膨らみから、家主の頭と細い白い腕が現れる。 「ん…」 艶のある声を漏らしながら、むくり、と上半身…
「まどかに悩み事?」 夜の帳が降りた頃、少し寂れた街の界隈で、美樹さやかは携帯の向こうの相手に話しかけた。 『うん、最近様子がおかしくってさあ』 少年の心細そうな声に、さやかは困った様に眉根を下げた。無意識に黒の野暮ったいスーツの襟を正す。つ…
「ねえ、あんたどれ観たいの」「ちょっと、待ちなさい気が散るから」暁美ほむらは腕を組んで目の前の映画上映の掲示板を必死に見つめていた。ため息が出るほどの美貌の持ち主なのに、上映時刻の重なりと作品の品薄さを口汚く罵っている様はまるで子供のよう…
「おい美樹、何そわそわしてやがる」「へ、い、いやっ、なんでもありません…」 白髪の初老の男に睨まれて、美樹さやかは慌てて首を振る。時刻は18時30分、定時はとっくに過ぎているが、マル暴には「ノー残業デー」という概念は無いらしい。無機質な執務室内…
「姉ちゃん、本当にいいの?」「え、いいに決まってるじゃない、たくさん呼びなよ」 周囲がクリスマス一色の雰囲気になった頃、鹿目まどかとその弟のタツヤは街を散策していた。例年の「家族パーティ」で必要な飾り付けを購入するためだ。 「だって、俺のク…
白い手が伸びて、私の手を掴むのだ。 ――さやか と呼ぼうとしているのだろう、しかし私には聞えない。彼女の口からは泡沫が溢れてきて声にはならなかったのだ。 ここは蒼い水の中だった。何故、彼女が私のテリトリーにいるのかは思い出せない。ただ、私は水の…
「はい、美樹の携帯です」 意識は未だ朦朧としているが、暁美ほむらはとりあえずきちんと返答した。問題はそこからだ。携帯のレシーバーから男性のがなりたてる声が聞える。眉をひそめ、その圧倒的美貌に「不愉快」の表情を滲ませながら、ほむらは囁いた。 …
「夏季休暇?」 美しい眉を少しあげながら、黒髪の女性が不思議そうに目の前の蒼い髪の女性を見つめる。 「うん、それでどこか行こうかなって…」「ちょっと、どうして社会人なのに夏季休暇があるの?」 パンを咀嚼しながらもごもごと話していた蒼い髪の女性…
これは二人が表面上大学生として人間らしく生活していた頃の話。 見滝原市の中央にあるショッピングモールは地下にカラオケ店が一軒ある。だいたい休日や平日の夕方は学生客でごった返すのだが、その日もご多分に漏れずだいぶ混雑していた。ほんの少しだけ違…
「大分昔のことだけどね」 暁美ほむらのその口癖は直る様子はなかった。またか、と美樹さやかは思う。この10年間でこの黒髪の女性は何回「大分昔」と呟いたのだろうかと。 「……1万回くらい?」「……?なんのこと?」「いや…別に、ところであんたのその「大分…
『さやか、貴方何してるの?』「…え、えへへちょっと街をふらつこうかと…」 はあ…と電話越しに相方のため息が聞こえる。美樹さやかは困ったような表情を浮かべた。今日は仕事が比較的早く終わり、ちょっと街でもふらつこうか…そう思った矢先の家の主からの電…
それはいつもの通り、美樹さやかが仕事を終えて家に着いた時の事だった。 「お疲れ様」 と、家に着いた途端、家主に温かい言葉を掛けられたので、美樹さやかはきょとんと目を見開いた。 「へ?あ、う、うん」 ただいまと言いながら、さやかは窓辺のソファに…
最近のペットショップ事情はなかなか厳しい。生体を販売すること自体反対する人々が多い中、村岡は必死に頑張ってきた。元々動物好きなこともあったが、脱サラして借金してまで興したこの店をむざむざ潰すわけにはいくまいと血の滲むような思いで経営の傍ら…
「にらめっこしましょう?」 と、いきなり傍にいた黒髪の女性が囁くものだから、美樹さやかは驚いて、ええ?と聞き返した。 「ど、どうしちゃったのよ一体?」 大学の昼休み、人気の多い場所を避け、ほむらとさやかは構内の隅にある林の中にぽつんと置かれて…
心に響く歌というのは、時代を超えて、世界も越えて万人に通ずるものである。特に演歌はそうだと、美樹さやかはすぐ隣に座っている幼馴染に告げられた。 「ほんとうにね…演歌って人の心を掴むんだよ、あ、この曲もとてもよくって…」 両手を合わせながら、桃…
大学の一般教養ほど眠気を誘うものはない。「ふああ…」さやかは口を抑えるが、あくびを噛みころすことができなかった。涙目で必死にノートを取る。こんなに眠いのに眠れないなんて、なんだか理不尽だ…とさやかはずれたことを考えた。ノートにはびっしりと化…
魔獣を倒した後の散歩もなかなか悪くない―― ほむらは朝日を浴びながらふと思った。相方はまだ仕事だし、家に戻っても誰もいない、だとすればたまにはこんな寄り道もいいだろう。誰もいない公園の並木道の中、一人ほむらはその美しい横顔に微かに笑みを浮かべ…
これは、二人がまだ社会人になりたてだった頃のお話 美樹さやかには大学時代数人友人ができた。友人とはいっても中学生の頃の特殊な体験で築かれていった仲間達とは違う、一般的な友人だ。だが、それでもさやかにとっては大事なものであった。さすがに特殊な…
「ん…いったあ」 頭を抑えながら、美樹さやかは身体を起こした。床の固い感触に顔をしかめながら周囲を見渡すと、傍のベッドがある。どうやらベッドから落ちたらしい。蒼い目をぱちぱちと数回まばたきさせて、彼女はようやく状況に気付く。 「なんなのよ…ま…
叛逆から数年後、人として表面上生きていくのが頃合いがいいと暁美ほむらも大学生になります。以前と違うのは「ある事件」で美樹さやかの価値観が揺らぎほむらに歩み寄るようになったこと。それによりほむらにも変化が生じます。それはまず生活の変化。いつ…
【前置き】 叛逆の物語を観てSSを書き始め、かれこれ7年になる小生。数字にすると「長いなあおい!」と思われそうですが(もちろん数字では長いですが)、好きで書いているものだから実質体感7か月くらいで(笑)長いどころかめちゃくちゃ短い、むしろこの…
こんばんは、面白いドラマが世の中に溢れだしていて毎日十本見ても全然足りないことに不安を覚えている小生です。これは本も同じ原理で、世の中面白い本に溢れているのに、その全てを読むことはおそらく無理で。何故なら今こうしている時に正に世界中のプロ…
こんにちは、さんかくです。 今まで神絵師さんや神字書きさんのツイッターをロム専していましたが、自分の作品の完成に発破を掛ける意味で、ツイッターを始めました。いやはや…いつも自分の内面で語っていたものを呟くというのは、難しくも面白いものですな…
こんばんは、さんかくです。 ピクシブにまどマギSSをUPしたので宣伝です。 www.pixiv.net まどマギの10年後のお話で、さやかとほむらとまどかが出てきます。無数の世界線があるのなら、成長してこういった関係になる彼女達もあっていいのかなあと切実に思っ…
こんばんは、さんかくです。 ようやっとマギレコイベントストーリー『Mixed Summer!』終わりましたので、感想を。相変わらず単純で小生の個人的意見を素直に述べただけの深みのない(汗)感想なので、ご了承ください。心の広い方…つまりなんでも読んでやるぜ…
こんばんは、さんかくです。 二次創作で、自分が書いた小説を読み返してみたら面白くて続きが読みたくなる!でも自分で続き書かなきゃっ!て時ありますよね。小生も「ああ、早く続きが読みたい」と思っている時があって、でもそんな時に本編から外れた作品を…
こんばんは、さんかくです。 はてなブログのデザインはいろいろあって、どれも素敵なので、ちょこちょこデザインを変えてます。またデザイン変えると思いますが、生暖かく見守ってくれればありがたいです。 さて、以前から二次創作を趣味で書いてますが、一…
こんばんは、さんかくです。 いやはや久々にマギレコ面白かったです。メインストーリーとタルト。キャラ同士の会話だったり性格が掘り下げられているストーリーはやっぱりいいですねえ。 ではではネタバレ有りで相変わらず書きなぐった感想ですが、読んでく…
おはようございます、小生です。 ようやっとマギレコ2章第3話終わりました(遅っ)ので感想を。 相変わらず単純で思ったこと好き放題書いてますので、ご了承ください。なんでもばっちこい!な方よろしくです。 ↓ ↓ ↓ ↓ まず、基本的に2章小生は面白いと思…
こんばんは、小生です。 今回は、小生が今まで見た映画の中で「は?」「なにこれ?」と茫然とした作品を紹介します。 『Hotel』(2004年製作) 監督:ジェシカ・ハウスナー 製作国:オーストリア・ドイツ ジャンル:サスペンス・スリラー 上映時間 74分 その…