さんかくの部屋

アニメ、ゲーム、ミステリ感想、二次創作多めの雑多ブログです。最近は、まどか☆マギカ、マギアレコードばっかりですがよろしくです。

【映画】個人的超掘り出しもの映画『トランスワールド』【ネタばれあり】

こんばんは、面白いドラマが世の中に溢れだしていて毎日十本見ても全然足りないことに不安を覚えている小生です。これは本も同じ原理で、世の中面白い本に溢れているのに、その全てを読むことはおそらく無理で。何故なら今こうしている時に正に世界中のプロ・アマ問わず作品を書いている人がいる。世の中まだまだ楽しいことばかりと喜び反面、全てを見ることのできない寂しさもあるわけですね。まあ、そんな面ばかりみて悔やむよりも、面白いドラマ、映画、本に出会えた喜びをブログで紹介する方がいいのかな、と思い直し、早速掘り出し物と個人的に思える映画を紹介します。

 

『トランスワールド』(原題:Enter Nowhere)2011年アメリカ映画

 

森の中に迷い込んだ3人の男女が出会い、そして森の中に閉じ込められてしまう。閉じ込められている間に3人はある違和感を感じ、そしてそれが更に大きな、とても大きなものだということに気づく―ー

 

‥‥までが大体のあらすじです。

これは本当に掘り出し物で、とにかく役者さんの演技が上手い!そしてシナリオもすごい!違和感なく、自然に引き込まれる面白さを持っています。「予算が映画を作るわけではない」を地で言っているのが正にこの映画。「予算が多ければいい映画を作れるわけではない」とこの映画を観ると思えるようになります。

 

私はこの映画をアマゾンプライムビデオで偶然見つけたのですが、評価がすごい高く、べた褒めだったのが気になって観ました。この映画についてはまさに評価通りとしかいいようがありません。ストーリーの内容はネタバレをしたとしても、そのネタバレよりも映画そのものの方が断然面白いと思います。映画を見終わった私も結末を知っていてももう一度見たいというくらい面白かったです。

 

さて、ここからネタバレを含みますので、楽しみに観たい!という人は回避願います!

ネタバレでもいいよ~という方はスクロールしてください。

 

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この映画は3人の主人公が登場します。

・金髪ヤンキー女性

 冒頭、ちゃらい彼氏と一緒にスーパーに強盗に入り、店主から金を踏んだ来るだけでは飽き足らず、彼氏を先に店に出した後、銃を店主に突きつけ金庫を開けろと脅す。店主は落ち着いたちょっと聖職者っぽい物言いで、女性を諭すが、女性は銃を撃ちます。(そのシーンは暗転して見せない)

 

・レインコートを着た古風な女性

先ほどのヤンキー女性が銃を撃った後暗転後、暗い森の中、一人で彷徨っているのがこの女性。レインコートにパンプス(ハイヒール)、どうやら夫と一緒に車に乗っていたが、ガス欠で車が止まってしまった模様。夫は助けを求めて外に出たが、一日経っても戻ってこないため、彼女は夫を探すために彷徨っていた。(妊娠中)

 

・ナイスガイな青年

短髪で男らしいが優しさのある青年。古風な女性が彷徨っているうちに小屋を見つけるが、そこに数日前から暮らしているとのこと。彼も数日前に森で迷い彷徨っていた。女性を助ける。

 

まず順番としては(冒頭は別として)、古風な女性が青年と出会い、その後、何故か小屋の外で金髪ヤンキー女性が倒れていて3人が揃う形になります。最初はギクシャクしている3人ですが、次第にいい距離感で会話ができるようになり、その会話からある「違和感」に気づきます。

 

まずその会話による違和感の前に3人がいる小屋自体がとても怪しいという演出が出てきます。青年が小屋から出て、真っ直ぐ歩いたはずなのに、目の前に小屋があること。(これだけでとてつもなく怪しい…!)

 

第一の違和感

「場所」の違和感。「あんたどこから来たの?」と会話が始まった時に、3人がそれぞれ違う場所を答える。ニューハンプシャーウィスコンシンサウスダコタと。

3人とももちろんそんなはずはないと言い合いになるが、だが3人とも嘘をついていないということを確信し、3人は途方に暮れる。

 

第二の違和感

「時代」の違和感。金髪女性が盗んだ金を古風な女性が興味本位で見るのだが、「これは偽札よ」と言う。その理由が「1984年なんて未来の紙幣があるわけないもの」であった。その瞬間、金髪女性は状況を理解し苦悩する。古風な女性は今は「1962年」と答える。そして青年は「2011年」、金髪女性は「1985年」と…。

 

この二つの違和感で、3人はタイムスリップしてきたと悟る。誰が何のために?という謎はあるが、さらにこの森には防空壕があり、中には1930年代もののワインやドイツ語の地図があった。そしてこの時代は第二次世界大戦だと…。

 

その後、一人のドイツ兵が現れ3人を襲う。3人を捉えたドイツ兵は驚く。それは古風な女性が同じペンダントを持っていたからだ、そして金髪女性も「私も持っている」という。そして青年も実は同じペンダントを持っていた。ペンダントには古風な女性の母親の写真が入っていた。

 

【真相】

ドイツ兵、古風な女性、金髪女性、青年はすべて血縁関係があった。ドイツ兵は古風な女性の父親で、古風な女性は金髪女性の母親、そして金髪女性は青年の母親だった。

 

ドイツ兵→ 古風な女性→ 金髪女性 → 青年

 (父) (娘/母)   (娘/母)  (息子)

 

ドイツ兵はこの戦争で亡くなり、古風な女性は父親の顔を知らなかった。そして娘を出産する時に亡くなる。そのため金髪女性も母親の顔を知らず、夫側の親戚に引き取られる(父親は戦死)。金髪女性も強盗殺人を犯したせいで、獄中で出産、青年は母親の顔を見ることなく成長する。それぞれ面識はないが、親子関係にあった。皆、それぞれ影のある人生だった。青年は牧師に虐待を受けていたといい、牧師を殺し自殺する。古風な女性は産気づいた時、誰も家におらず一人で苦しんで亡くなった。金髪女性は自分が死刑になる。その未来を3人はそれぞれ夢で見ていた。

 

その時青年はあることに気づく、もし、この戦争でドイツ兵が死ななかったら、すべてはいい方向に進むのではないかと。

タイムパラドックスともいえる展開だが、そこからが更に秀逸で。

 

ドイツ兵が死なない。つまり古風な女性の父親は死なない。そうなると、女性の母親はアメリカン人と再婚しない、妊娠した時にきっとそばにいてくれて出産は無事行われて女性は死なない。そうすれば、金髪女性は母親に育てられ、悪いことはしない。更にそうなれば青年も母親に育てられ、虐待を受けずにすむ。半信半疑だったが、3人はドイツ兵を死なせない様に必死に行動する。

 

それぞれが時間と共に消えていくのだが、あの防空壕へ古風な女性が連れていき、ドイツ兵は死なずに済んだ。

 

そうして場面は、またあの冒頭のスーパーに戻る。

 

金髪女性はもはやヤンキーではなく、買い物袋を抱えたお嬢様という雰囲気になっており、射殺したはずの店主も生きていて、穏やかに対応する。

「わたし、前にもここに来たことあるような気がして」と戸惑う女性に店主は微笑む。

その後、女性は大きな立派な邸宅へ戻る。そこにある新聞記事にあのドイツ兵だった男の逝去の記事があった。慈善事業家になっていたのだ。つまりはこの女性の祖父となる。女性はベランダから海の浜辺へと出る、その先には祖父の骨壺らしきものを持ったあの古風な女性が立っていた。古風な女性と金髪女性は親子として人生をやり直すことができていた、とても幸せそうに。

 

そしてラストちょっと前にスーパーに強盗が入るのだが、あのちゃらい男とまた別の女が銃を持って店主を脅す。冒頭と同じく女が店主に金庫を開けろというが、店主は「明けても望むものはない」といい、試すように女を煽る、そして女は銃を撃つという…。これスーパーの店主の存在について何も明言していないけど、人生をやり直させる力をもつ何かかなあと。説明がない分面白かったです。そして青年も出てこなかったけど、後に生まれて幸せな人生を送るかと思うと、ほんと見てて爽快な感動を覚えました。本当にいい掘り出し物をみつけたと思います。

 

 

以上がネタバレでしたが、ほんと最初から最後まできちんと練られていて、緻密!台詞回しもうまいし、演技も上手いし、感動もするし、なにこの映画!(誉め言葉)と叫んでしまいました。ちなみに時代の違いをうまいこと隠していたのも良かったです。服装や車でばれそうなのに、いつの時代でも着そうな服装を着せたところとかw

 

いやはや、もし機会がありましたら、観てください、おすすめです!